七十二候 第60番 · 11月2日 – 11月6日
楓蔦黄
Momiji tsuta kibamu · Maple and ivy turn yellow
山の楓と蔦が黄に染まり、紅葉が深まる晩秋の五日間。
楓が最も美しい時を迎えている。寺の参道から山間の谷まで、一枚一枚の葉が緑から黄、そして深い朱へと移ろう。朝霧が錦に染まる森を立ち昇り、吐く息が白く見える澄んだ空気が辺りを包む。
自然便り
猪が脂肪を蓄えるため山を下り、里近くまで姿を見せる。北から渡ってきた鶫の声が落葉樹の森に響く。夏の間、石垣を覆っていた蔦も黄葉して散り始め、下の石肌が露わになる。山の渓流は冷たく澄み、水面に紅葉が浮かんで流れてゆく。
旬
果物
柿
蜜柑
林檎
柚子
野菜
春菊
蕪
山芋
長葱
魚
鮃(ひらめ)
鰆
𩸽(ほっけ)
食卓
01
紅葉の天ぷら
本物の楓の葉に衣をつけて揚げる大阪箕面の名物で、季節をそのまま味わう風雅な一品。
02
山芋のとろろ汁
すりおろした山芋を温かい出汁でのばし、冷え込む夜に体を優しく温める。
03
𩸽の開き
干した𩸽を香ばしく焼き上げ、脂の乗った身をほぐしていただく秋の朝餉の定番。
文化便り
紅葉狩りの最盛期である。花見の賑わいとは異なり、紅葉狩りは静かな観照を旨とする。早朝の寺院の庭を歩き、山道で一枝の紅葉に足を止める。京都の東福寺では通天橋から眼下に広がる紅の海を眺め、人々は声を潜めて秋の深まりを味わう。
蔦の葉の離るる音や夕日影
tsuta no ha no / hanaruru oto ya / yūhi kage
the sound of ivy / releasing its leaves — / evening sun's last light
一枚の紅葉が、まだ朱を湛えたまま、静止した空気の中をゆっくりと舞い降りてゆく。