七十二候 第59番 · 10月28日 – 11月1日

霎時施

Kosame tokidoki furu · Light rains sometimes fall

ふいに小雨がぱらつき、晩秋の空気はひんやりと、落ち葉は濡れて艶めく頃。

雨は囁くように降る。夏の驟雨とは違い、鼠色の空からふと現れては消える、ためらいがちな時雨。濡れた石と朽ち葉の匂いが静けさの中に漂う。雨の合間、柿の葉に残る雫が、わずかな光を映して揺れている。

自然便り

渡り鳥の群れが空を渡り、その声が湿った空気を縫うように南へ流れてゆく。晩秋の赤とんぼは枯れ始めた葦に翅を休め、雨粒を宝石のようにまとっている。山の谷では紅葉が橙から深紅へと染まり、雨上がりの森には茸が静かに顔を出す。

旬

果物

柿

梨

むかご

柚子(走り)

野菜

春菊

長葱

里芋

蓮根

魚

鰆

鮃

羽太(ハタ)

食卓

01

柿の天ぷら

硬めの柿を薄衣でさっと揚げ、ほのかな温かさが甘味を引き立てる。

02

長葱のぬた和え

さっと茹でた長葱を白味噌と酢で和えた一品、肌寒い夜にふさわしい。

03

羽太の煮付け

脂ののった羽太を甘辛く炊き上げ、雨音を聞きながらいただく。

04

蓮根饅頭

すりおろした蓮根を蒸し上げ、温かい餡をかけて供す、天気の定まらぬ頃のやさしい一椀。

文化便り

十月も終わりに近づくと、十一月十五日の七五三に向けた支度が始まる。呉服店には晴れ着が並び、千歳飴を選ぶ親子の姿が見られるようになる。この時期のにわか雨は「社洗いの雨」とも呼ばれ、祝いの場を清めるかのように降るという。

時雨過ぎ軒に残りし雫かな

shigure sugi / noki ni nokorishi / shizuku kana

passing autumn shower — / at the eaves, a single drop / still clinging there

雨が止み、静寂の中、杉木立から一声、鴉が鳴いた。湿りを帯びた空気に、その声だけが遠くまで届いてゆく。