七十二候 第58番 · 10月23日 – 10月27日

霜始降

Shimo hajimete furu · First frost falls

夜明け前、枯草や落葉の縁が白く凍てつき、秋が冬へと深まる気配を告げる初霜の候。

払暁の静寂のなか、世界は息をひそめている。庭先の枯草に薄霜がおり、一本一本が白い針のように光る。吐く息が白く立ちのぼる十月末の朝——裸になりかけた枝に残る柿の実が、まるで提灯のように橙色に輝いている。

自然便り

雁の群れは鉛色の空を南へ渡り、その声が冷えた大気に響く。道端や山裾では野菊がひっそりと咲き、冷気のなかでその苦みを帯びた香りがいっそう際立つ。高い山の紅葉は盛りを過ぎ、里ではまだ緑を残す木々もあり、山肌は幾重もの色の層をなしている。

旬

果物

柿

梨

蜜柑

花梨(かりん)

野菜

蓮根

蕪

春菊

蕗

魚

秋刀魚

鰤(ぶり)

いくら

食卓

01

蕪のそぼろ煮

霜に当たって甘みを増した蕪を鶏そぼろとともに薄味の出汁で炊き、身体の芯からじんわりと温まる一品。

02

鰤大根

脂の乗り始めた若い鰤と、寒さで甘みを蓄えた大根をじっくり炊き合わせ、互いの旨味が染み渡る晩秋の定番。

03

柿の白和え

熟した柿の蜜のような甘さを、絹ごし豆腐と胡麻の衣がやさしく包み、秋の名残を味わう和え物。

文化便り

霜降の頃は、冬支度を本格的に始める時節である。蔵や箪笥から綿入れの着物や布団を出し、虫干しをして陽に当てる。農家では最後の大根を引き、土室(つちむろ)に野菜を貯え、来たる冬に備える。初霜は、自然と人の暮らしが冬へと歩調を合わせる合図であった。

初霜や枯葉の縁の白き息

hatsushimo ya / kareha no fuchi no / shiroki iki

first frost — / along the edge of dead leaves / a white breath

夜明けの藍色のなか、凍てついた草の一本一本が朝日を受けて燃え立ち、やがて陽が昇るにつれ、その小さな炎は静かに消えてゆく。