七十二候 第49番 · 9月8日 – 9月12日
草露白
Kusa no tsuyu shiroshi · Dew glistens white on grass
朝ごとに草の上の露が白く光り、日の出前の野原はまるで初霜が降りたかのよう。
夜明け前に外へ出れば、草むらは露に濡れて銀色に光っている。陽が低く差し込むと、その一粒一粒が小さな灯火のように瞬く。空気には秋の鉱物的な冷たさが混じり、夏の名残と秋の気配が肌の上で入れ替わる。
自然便り
蜻蛉が朝露を翅に宿したまま、竹垣の上で微動だにしない。蝉の声は遠くなり、代わりに松虫や鈴虫の声が夜通し響く。田んぼでは稲穂が頭を垂れ始め、緑から黄金色へと移ろう姿が日ごとに濃くなる。
旬
果物
ピオーネ
幸水梨
無花果
シャインマスカット
野菜
松茸
蓮根
里芋
三つ葉
魚
秋刀魚
戻り鰹
真鯛
食卓
01
松茸ご飯
薄切りの松茸を炊き込んだご飯は、山の香りをそのまま食卓へ運ぶ秋の贅沢。
02
戻り鰹のたたき
脂ののった戻り鰹を藁で炙り、薬味とともにいただく——初鰹とは違う深い旨みが秋を告げる。
03
栗きんとん
蒸した栗を裏漉しして茶巾に絞った素朴な和菓子、この時季だけの山里の味わい。
04
里芋の味噌煮
ねっとりとした里芋を白味噌でじっくり煮含め、秋の土の恵みを優しくいただく。
文化便り
この頃は旧暦九月九日の「重陽の節句」と重なることが多い。前夜に菊の花へ真綿を被せ、翌朝その露を含んだ綿で肌を拭う「菊の被綿(きせわた)」という風習があり、無病息災を祈った。現代でも和菓子店には菊を象った上生菓子が並び、露に宿る清めの力を想う心が受け継がれている。
草の露踏めば崩るる朝の道
kusa no tsuyu / fumeba kuzururu / asa no michi
stepping on grass dew — the morning path crumbles underfoot
陽が高くなる頃には露は消え、草の冷たさだけが足首にかすかに残っている。