七十二候 第47番 · 8月28日 – 9月1日

天地始粛

Tenchi hajimete samushi · Heaven and earth begin to cool

厳しかった残暑がようやく和らぎ、朝夕の空気に確かな涼しさが宿り始める。

明け前、空気の質が変わっていることに気づく。冷たいというほどではないが、夏の重さが抜けている。蝉はまだ鳴いているが、その声はまばらになり、途切れた合間に竹林を渡る風が、澄んだ高い音を立てるのが聞こえる。明け方に外へ出れば、大地が長い息を吐いたような気配を感じる。

自然便り

赤とんぼが数を増し、低くなった陽光を受けて田んぼの上を行き交う。畦道や川沿いではススキが銀色の穂を伸ばし始めた。気温が下がるにつれ、鈴虫や松虫の声が夜ごとに冴えわたり、涼やかな空気の中をどこまでも響いてゆく。

果物

巨峰

早生柿

無花果(いちじく)

野菜

南瓜

薩摩芋

しめじ

大葉

秋刀魚

間八(かんぱち)

食卓

01

無花果の胡麻和え

熟した無花果を練り胡麻で和えた一品。果実の蜜のような甘さと胡麻のほろ苦さが交わり、夏と秋の境目を味わう。

02

秋刀魚の蒲焼

初秋の脂の乗った秋刀魚を開いて甘辛いたれで焼き上げる。この時季ならではの濃厚な旨みが口に広がる。

03

薩摩芋ご飯

掘りたての薩摩芋を炊き込んだご飯。芋のほくほくとした甘みが米に移り、素朴ながら秋の到来を告げる。

04

間八の刺身

水温が下がり始め脂の乗りが増した間八を薄造りに。清々しい旨みが涼風のような後味を残す。

文化便り

この頃は古くから「虫聴き」の季節とされる。鈴虫や松虫を小さな竹籠に入れて、その澄んだ音色を愛でる風習は平安の昔から続いてきた。虫の声を騒音ではなく、秋の訪れを告げる音楽として聴き入る感性は、移ろいゆくものへの慈しみを大切にする日本人の美意識を映している。

朝風に

蝉の声止む

間の青さ

asakaze ni / semi no koe yamu / ma no aosa

In the morning wind / the cicadas fall silent — / blueness in the pause

まだ日の残る庭の隅で、一匹の蟋蟀がひとり鳴き始めている——長くなる夜に向けて、声を確かめるように。