七十二候 第45番 · 8月17日 – 8月22日

蒙霧升降

Fukaki kiri matō · Thick fog descends

朝霧が谷や海岸を包み、夏の終わりと秋の始まりが静かに交差する頃。

明けは白い帳の向こうからやってくる。霧は海から立ち上り、田んぼから湧き、山の稜線を曖昧にし、遠くの集落を記憶の中へと溶かしてゆく。空気には来たるべき涼しさと、まだ残る夏の湿り気が同居している。陽が霧を焼き払う前のひととき、季節の境目をもっとも肌に感じる。

自然便り

蝉の声はまだ聞こえるが、その合唱は薄れ、夕暮れには秋の虫が遠慮がちに鳴き始める。赤とんぼが田の畔を行き交い、その数は日ごとに増す。霧は蜘蛛の巣に露を纏わせ、銀の糸細工を浮かび上がらせる。柿の実はまだ青いが、ほんのりと色づき始めている。

果物

ピオーネ

シャインマスカット

二十世紀梨

白桃

野菜

舞茸

南瓜

獅子唐

蓮根

秋刀魚

車海老

食卓

01

秋刀魚の塩焼き

初秋刀魚を塩焼きにし、大根おろしと酢橘を添えて——脂の乗った秋の使者を迎える一皿。

02

梨の白和え

みずみずしい梨を絹ごし豆腐と白胡麻で和えた、夏と秋の狭間にふさわしい涼やかな味わい。

03

舞茸の天ぷら

山から届いたばかりの舞茸を軽やかに揚げ、秋の森の香りを衣に閉じ込める。

04

葡萄とモッツァレラのサラダ

収穫が始まった葡萄をモッツァレラと合わせた、この時季ならではの取り合わせ。

文化便り

お盆の送り火を終え、先祖の霊を見送った後の静けさが漂う頃。霧は彼岸と此岸を繋ぐ帳とも言われ、その白い靄の中に去りゆく魂が溶けてゆくと伝えられる。寺の鐘の音も霧に吸われて柔らかく響き、仏壇には名残の桃や葡萄がもう少しだけ供えられている。

霧深く祖母の声する畦の道

kiri fukaku / sobo no koe suru / aze no michi

deep in the fog / grandmother's voice drifts / along the paddy path

霧は午前のうちに晴れるが、その名残は光の柔らかさに宿り、紅葉がすでに知っていることを、私たちにもそっと教えている。