七十二候 第23番 · 4月25日 – 4月29日
霜止出苗
Shimo yamite nae izuru · Last frost, rice shoots sprout
遅霜がようやく去り、水を張った苗代では稲の芽が静かに頭をもたげる頃。
四月も終わりに近づくと、朝の空気から刺すような冷たさが消え、代わりに湿った土と温む水の匂いが漂う。苗代には朝靄がたなびき、まだ親指ほどの早苗が、目に染みるような緑を水面に映している。数週間前まで草を白く染めていた霜は、いつの間にか北へ退いていった。
自然便り
燕はすでに夏の縄張りに落ち着き、田の上を低く飛んでは水面から立ち上る虫を追う。夕暮れになると雨蛙の声が幾重にも重なり、畦道の用水路では水馬が空を映す水面を滑る。泥の中では蜻蛉の幼虫が蠢き、羽化の時を待っている。
旬
果物
いちご
枇杷(びわ)
晩生みかん
夏みかん
野菜
筍(たけのこ)
蕗(ふき)
木耳(きくらげ)
独活(うど)
魚
鯛
鰆(さわら)
しらす
食卓
01
筍ごはん
掘りたての筍を薄味の出汁で炊き込んだ春の味——硬くなる前の、ほんの一瞬を捉える料理。
02
鯛の酒蒸し
産卵を控えて身が最も繊細になった鯛を、酒と昆布でふっくらと蒸し上げる。
文化便り
この候は「水入れ」の始まり——田に水を引き、大地を空の鏡へと変える時である。農家は暦を読み、遅霜の気配が完全に消えるのを見届けてから水を放つ。静かな所作の中に、一年の実りへの祈りが込められている。
苗代の水面に雲の流れをり
nawashiro no / minamo ni kumo no / nagare ori
in the nursery field / clouds drift across the water — / seedlings stand waiting
水を張ったばかりの田を歩く農夫の足元から、映り込んだ空が静かに波紋を広げていく。